2000年5月23日
諫早干拓事業現地視察報告書 別紙

諫早湾干拓事業に関する民主党方針(案)


環境・農水ネクスト大臣
佐藤謙一郎
社会資本整備担当ネクスト大臣
前原 誠司


 「優良農地の確保」と「地域防災機能の強化」を目的とする諫早湾干拓事業(農水省直轄 事業)について、民主党ネクストキャビネットは、本年5月16日〜17日の2日間にわた り現地視察を行い、同事業に対するわが党の方針について検討を行った。その結果、 「干拓事業を現時点中止するとともに、一刻も早く水門を解放し、干潟の再生のための必要な措置を講ずるべきである」との結論に達した。以下にその理由を示す。

1.干拓地における営農計画の実現性が疑わしいこと。

 農水省ならびに長崎県の説明によれば、諫早湾干拓事業における営農計画について、 農地配分面積1477haのうちバレイショ・たまねぎ・レタスなどといった野菜生産 に1004haをあてることとしている。しかし干拓地における野菜生産は、地中に残留し た塩分が悪影響を及ぼすことが知られており、除塩作業に長い年月と費用を要するも のである。とりわけ諫早湾干拓地は、砂礫を中心とする他の干拓地とは異なり雨水が 浸透しにくい有明粘土層で構成されていることから、塩分除去はより困難なものと想 定される。また農地をリン酸・銅・鉄分・マンガンなどを多く含む土壌に改良する「熟畑 化」に関しても、農水省ならびに長崎県の見通しは、「約5年で可能」というものであり、きわめて安易かつ不十分な計画であると言わざるを得ない。このため採算ペースにそった畑作生産について当初は非常な困難を伴うことが想定され、長崎県の示す営農モデル試算(バレイショ・ニンジン・たまねぎの組み合わせによる大規模野菜経営、1戸あたり面積20haで年間農業所得3300万円)の実現は不可能である。
そもそも減反政策により長崎県内には多くの遊休農地が放置されており、コストのか さむ新規干拓地を造成する必要性は乏しいと言わざるを得ない。

2.同事業による洪水防災効果が十分とはいえないこと。

 農水省によれば、潮受堤防の設置により湾奥部を潮汐の影響から遮断し、堤防内調整池の水位を標高マイナス1mに管理することにより、高潮・洪水被害を防止することともに後背地の常時排水対策に資するとされている。
 しかし、高潮対策としての潮受堤防の効果は認められるものの、洪水対策としての効果は認められない。現に1997年7月に発生した大雨では、潮受堤防締め切り後であるにもかかわらず諫早市中心部の商店街が冠水し、死者1人、床上・床下浸水711棟の大被害をもたらした。本来、本名川(転載者注:本明川)の洪水対策は干拓事業とは別途に講じられるべきである。現在急ピッチで工事が行われている本名川(転載者注:本明川)の浚渫工事についても、市内中心部の洪水被害の反省から行われているものであり、干拓事業が洪水対策としての効果に乏しいことを如実に証明している。また常時排水対策としても、今後地下水位の低下による地盤沈下の影響は避けられないことから、ポンプによる排水に頼らざるをえないことが明白である。

3.諫早湾締め切りにより深刻な環境被害が生じていること。

 諫早湾締め切りにより、赤潮の頻発、海藻類の消滅、底魚の激減、満潮時水位の上昇など有明海全域の自然環境にさまざまな影響が及んでいる。とりわけ諫早湾干潟の消滅は、ムツゴロウをはじめとする各種動物の生育場所が失われただけではなく、干潟もつ自然浄化作用が失われたことも意味している。 現在、潮受堤防内部の調整池の水質は、市街地からの家庭排水の流入とあいまって、「どぶ水」と呼ばれるほど汚濁したレベルに達している。これは諫早湾の締め切りならびに干潟浄化作用の喪失によるものであり、これらの汚水が排水門から外側に排出されることによって、周辺漁業者に深刻な漁業被害を及ぼしているのが現状である。

 本事業はこれまで2001年度3月31日の完成を予定していたが、これを2006年に延期するとともに、総事業費についても120億円積み増して(転載者注:当初の計画と比較すると1140億円増の)2490億円とされた。また費用対効果分析についても当初の1.026を1.01に下方修正したが、その算定根拠は示されていない。さらなる防災効果も期待できないうえに、減反政策により遊休農地があふれる今日における農地造成はまったくの無意味であり、巨額の公費投入と貴重な干潟の破壊の代償としてはあまりにも高くつくものであると言わざるを得ない。

  以上の観点から、わが党としては、直ちに干拓事業を中止するとともに、排水門を常 時解放することによって諫早湾の内部に海水を導入し、干潟の再生のために必要な措置を講ずるべきであると考える。また、高潮対策をはじめとする防災効果についてはある一定の効果が認められることから、大雨などの災害時には堤防の水門を操作することによって、農地の冠水被害を軽減するための運用を行うべきであると考える。また既に干陸化した部分の使途については、農地としての利用に限定することなく、干潟への回復を含めて今後柔軟に検討するべきであると考える。


のんきの注:「党方針」と「党方針案」と「6/14代表声明」
 この「党方針」は総選挙直前の5月、民主党ネクストキャビネットの閣議に提出されたものです。採択されたと聞くが、民主党HPには川辺川・吉野川・中海事業は「中止」で諫早は「全面的見直し」とする鳩山代表の次の6/14声明の掲載があっても党方針はない。佐藤謙一郎ネクスト農水大臣の議員HPに掲載されていますが、「」の一字がいまだに残っています。(00/07/27記)

 民主党前原誠司担当大臣によって、原案通り採択され民主党の方針となっていることが確認されました。(00/8/8 確認・記



のんきの評1:鳩山代表6/14声明
 「諫早湾干拓については、防災目的の必要を認めつつ、計画と運用の全面的見直しを行う。干拓地の農用地利用計画を大幅に縮小するとともに、排水門を開けて、干潟の再生に必要な措置をとる。また、防災対策上必要と思われる潮受堤防の嵩上げや排水ポンプの整備を推進する。」(鳩山代表6/14声明)
 防災上の効果は「高潮対策をはじめとする防災効果についてはある一定の効果が認められる」と党方針案にある通り、潮受堤防の防潮効果なのだから、その「潮受堤防の嵩上げ」をさらに「推進」する必要はない。また市街地の洪水に効果があるとする推進派が主張する「防災目的の必要を認め」るようにも読める文書は不十分で、この河川氾濫を防止するという防災目的をはっきり否定することが一番重要な観点です。 
 また事業が計画段階の川辺川ダム・吉野川可動堰と事業が休止状態の中海干拓の3事業を中止とし、工事が着々と進んでいる諫早をこの中止3事業から外して「全面的な見直し」とするのは逆立ち。まず「現時点で中止」し、その後に「見直し」をしないと着工中の事業は終了してしまう。

のんきの評2:地元民主党が推進派のために3年間も党方針が決まっていなかった。
 党方針として正式に公表されないのは、地元長崎県連代表で党副幹事長の高木衆議院議員の反対が背景にあると推測されます。民主党長崎県連は一貫してこの事業の賛成し推進しているという事実が選挙戦を前にして明らかになりました。
 本年1〜2月に当HPが行った「2000年度予算から諫早事業費を削除することを求める」行動によって、締め切りから3年もの間、諫早湾干拓事業についての党方針が決定できずにたなざらし状態にあったことが明らかとなりました。しかし総選挙を前にして結論を出さざるを得なくなり、党方針案が提出され採択されたことは大きな前進と言えます。(00/07/27記)


諌早湾干拓事業公式資料ページ
http://www.cityfujisawa.ne.jp/~559-mori/isahaya/